営業・採用課題等の解決に向けて、「オウンドメディアの運営を始めた」という企業が増えていますが、一方でオウンドメディアを運営しても全然成果が上がらず、「オウンドメディアって意味がないのでは…?」と感じて、運営を中止してしまうケースも散見されます。
しかしオウンドメディアは、適切な運営を行えば必ず成果を創出することができます。成果が上がらない場合は、そこに必ず原因があるのです。
そこで今回の記事では、オウンドメディア運営が失敗してしまう原因と成果を出すための対策について、現役WEBマーケティングコンサルタントがわかりやすく解説します。
オウンドメディア運営の担当者の方や、これから運営を予定している企業様の参考になれば幸いです。
<この記事を読むとわかること>
オウンドメディアを運用するメリット
オウンドメディア運営が失敗してしまう原因
オウンドメディア運営で成果を出すためのポイント・対策
<筆者プロフィール>
日比 海里 株式会社トリッジ代表取締役 / WEBメディアディレクター・コンサルタント / デザイナー
デザイン・コンテンツ制作運用スキルをベースに、グラフィック・WEBデザインやオウンドメディア運営のサポートを通じてクライアントの課題解決・事業グロースを支援。
<目次>
オウンドメディアとは
まずそもそも「オウンドメディア」とは何なのか、その定義から整理しておきましょう。Webマーケティングでは、「PESOモデル」と呼ばれる4つのメディア(オウンドメディア、ペイドメディア、アーンドメディア、シェアードメディア)を活用して戦略・施策に取り組んでいくのが基本ですが、その中の1つであるオウンドメディアは、「自らが発信権・編集権を持っているメディア」を指します。
たとえば、以下のようなメディアが例として挙げられます。
オウンドメディアの例
コーポレートサイト
ブランドサイト
製品・サービスサイト
ランディングページ
ブログ型情報サイト
SNSの企業公式アカウント
(紙の)会社・サービスパンフレット
ここで注意したいのが、「自社が発信権・編集権を持っているメディアは全てオウンドメディアに含まれる」ということです。たとえばよくある勘違いとして、SNS(Facebook、Instagram、X等)の企業公式アカウントを「アーンドメディア」や「シェアードメディア」に分類してしまっているケースが挙げられます。
確かにSNSの企業公式アカウントは他社のプラットフォーム(facebookであればMeta社のプラットフォーム)上に作られますが、それでもそのアカウントの発信権や編集権は自社にあるはず。そのため、SNSの企業公式アカウントはオウンドメディアに分類するのが正解です。
そのような意味では、Webに限らなければ紙のパンフレットや会社案内も「自社に発信権や編集権のあるメディア」に該当するので、これらもオウンドメディアと言えます。
オウンドメディアを運用するメリット
そんなオウンドメディアを運用するメリットとしては、以下の点が挙げられるでしょう。特に営業課題や採用課題の解決につながるメリットが多くあります。
①確度の高いリード獲得ができる
オウンドメディアを運営することの1番のメリットとしてよく挙げられるのが「確度の高いリードが獲得できる」という点です。オウンドメディアにユーザーが必要としている有意義な情報コンテンツを作成・掲載することで、まだ自社商材に関心が少ないユーザー(潜在層)に対してもアプローチすることができ、加えてそれらユーザーの商材への興味関心を自然に高めさせることもできます。
そのためうまくオウンドメディアを運用・活用できれば、問い合わせ時点ですでに購入意志を持った確度の高い見込客の獲得ですら期待できるのです。
②ブランドを広められる(ブランディング)
オウンドメディアは「自分たちが伝えたい情報を自由に発信できる(外部の制約を受けない)」という特徴があるため、オウンドメディアでの情報発信を通じて自社の思い・ブランドイメージをユーザーに届け、企業イメージを作り上げることができます。
またSEO対策に力を入れれば、特定のキーワードを検索するたびに自社のページ・記事が表示され、「△△といえば○○株式会社」というような第一想起(=最初に思い浮かべるブランド)を生み出すこともできます。
このような「ブランドを広められる」という点もオウンドメディア運営の大きなメリットと言えるでしょう。
③採用力を強化できる
最近ではオウンドメディアを採用に活用する企業も増えています。従来の採用サイトや採用イベント等での情報発信だけでは企業の特徴・魅力・仕事内容等を伝え切ることは難しく、それが採用後のミスマッチや早期離職につながってしまうこともよくありました。
しかしオウンドメディアを活用すれば、これまで発信しきれなかった様々な情報(自社が求める人材の具体的イメージ、採用後の働き方の詳細、先輩社員の声等)を届けることができ、就職後のミスマッチを減らすことができます。
『オウンドメディアリクルーティング』という言葉が近年よく使われるようになってきたのも、オウンドメディアに「採用力を強化できる」というメリットがあるからに他なりません。
④自由度の高い情報発信ができる
前述の通り、オウンドメディアは「自分たちが伝えたい情報を自由に発信できる(外部の制約を受けない)」という特徴があるため、自由度の高い情報発信ができる点も大きなメリットでしょう。
内容の自由度だけでなく、形式の自由度(記事コンテンツ・動画コンテンツ・ホワイトペーパー・SNS連携など)も高いため、非常に幅広い情報を幅広いユーザーに適切に届けることが可能です。
⑤コンテンツが資産になる
そしてオウンドメディア運営のメリットとして非常に大きいのが「作成した情報コンテンツが資産になる」という点です。
一度記事を掲載すれば、その記事はオウンドメディアが存在している限り永続的にWeb上に存在し続けます。そのため、集客効果の高い記事の作成・掲載を積み上げていくことで、その効果もどんどんと高まっていくわけです。
たとえば月5件の問い合わせを獲得できる記事があった場合、同様の集客効果が期待できる記事を翌月にも作成・掲載できれば、問い合わせ件数の合計は「毎月10件」に。さらに翌月にも同様の効果が期待できる記事を作成できれば、問い合わせ獲得件数は「毎月15件」になるわけです(その後もずっと記事が集客し続けてくれる)。
SNSやメルマガなどにも集客効果はありますが、一過性のフロー情報(古い情報は読まれない)になりやすく、継続的な集客効果はあまり期待できません。また広告はコストをかけている間は集客効果があるものの、資金投下をやめた途端に集客効果は全くなくなります。
このように、オウンドメディアの情報はストック情報として集客面で機能してくれるため、作ったコンテンツが無駄にならず、半永続的に資産として活用できるわけです。この点はオウンドメディア運営における非常に大きなメリットです。
⑥中長期的な広告費削減につながる
「コンテンツが資産になる」というメリットは、中長期的に見れば「広告費の削減」にもつながります。
前述の通り広告はコストをかけている間は集客効果があるものの、資金投下をやめた途端に集客効果は全くなくなります(しかも費用は掛け捨て)。一方、オウンドメディアで集客効果の高いコンテンツを作成・掲載することができれば、継続的なコストをかけなくてもコンテンツが半永続的に集客し続けてくれるため、結果的に広告よりも費用対効果が高くなり、広告費の削減へとつながっていくわけです。
そのため広告予算を多く確保できない企業などは、オウンドメディア運営によるPR・集客を選択肢に入れることをおすすめします。
オウンドメディア運営が失敗してしまう原因
そんな多くのメリットを持つオウンドメディアですが、世の中の実態として運営に失敗してしまう(運営を途中でやめてしまう)企業が散見されるのも事実です。
多くの企業のオウンドメディア運営をサポートしてきた弊社からすると、運営に失敗してしまう企業には共通している「失敗の原因」があります。それらを整理すると、以下の5つが挙げられるでしょう。
①目的が明確になっていない
まず最初に挙げられる失敗の原因は「オウンドメディア運営の目的が明確になっていない」ことです。
オウンドメディア自体の注目度が近年高まっているため、「よくわからないけど、オウンドメディアって取り組んだ方がいいんでしょ?」という“なんとなく運営を始めてしまう”ケースが後を断ちません。しかし、オウンドメディアも目的を明確にした上で戦略的に運営を行なっていかなければ、効果的なコンテンツ(ターゲットユーザーが必要としている・刺さる情報)を作成することは絶対にできません。
またそのような行き当たりばったりの運営を行なっていると、的確な効果測定も(適切な目標設定・目標との乖離)できなくなりがちなので、その結果「オウンドメディアを運営しても効果が出ない」という結論に至りやすいわけです。
このような結果にならないためにも、必ず最初にオウンドメディアの目的と全体の方向性を戦略として落とし込んでおくことが大切です。
②社内理解が得られていない
オウンドメディア運営に対する「社内理解が得られていない」ケースも失敗しやすいでしょう。
オウンドメディア運営を行う上では、他部署を巻き込んでコンテンツ制作を行うケースもよくあります。その際に共通認識・理解を得ていないと「なぜうちの部署までこんな面倒なことをやらなくてはいけないのか」などの反感を買うことになり、コンテンツ制作がスムーズに進まず、結果的に運営がストップしてしまうわけです。
また、オウンドメディアの最高責任者(多くの場合は経営者・役員)の理解も重要です。オウンドメディアは成果が出るまでに一定の時間を要しますが、その点などを経営者・役員が理解できていないと、これまた運営がストップしやすくなります。
基本的に最高責任者のコミットメントが強いほど、オウンドメディアは長く続く傾向にあるため、弊社のこれまでの経験上、取り組みに対する社長の理解は特に重要といえます。
③更新が続かない(運営体制が整っていない)
基本的なことかもしれませんが、「更新が続かない」こともオウンドメディアの失敗ケースではよく見かけます。なぜ更新が続かないのか、その原因の多くは“運営体制が整っていないまま走り出してしまう”ことです。
特に、専任担当者が用意できず、社員が通常業務とオウンドメディア運営を“なんとなく兼務でやり始めた”というようなケースは、非常に危険なパターン。そのようなケースでは、日常業務の合間に記事を書く形になりがちなので、最初はなんとか執筆を続けられるものの、徐々に忙しい日常業務を優先するようになり、やがて更新が止まってしまうのです。
そのためオウンドメディアを始めたら、更新が安定する運営体制をしっかり整えることが大切です。
④成果を急ぎ過ぎてしまう
「成果を急ぎ過ぎてしまう」ことは、オウンドメディア運営が失敗してしまう最も大きな原因と言えます。オウンドメディアは成果が出るまでに、早くても半年、長ければ2~3年の時間が必要になります(これはSEOにおいて検索エンジンから適切な評価を受けるのに時間がかかることに起因しています)。そのため成果を急ぎ過ぎてしまうと、オウンドメディアそのものの運営意義を見失いやすくなり、これまた途中で運営をストップしてしまうわけです。
特に注意したいのは、経営者がこの点を理解できていないケースです。オウンドメディアの最高責任者(経営者)が“オウンドメディアは成果が出るのに時間がかかる”という点を理解していないと、「半年も経ったのに全然成果が出ていないじゃないか!」と声を荒げることになり、そこで間違いなく運営は止まります。
どんな経営者でも基本的に「成果は早く求める」のが基本スタンスであるため、オウンドメディア運営担当者はしっかりと経営者に「成果が出るまでの期間」について伝え、あらかじめ理解してもらう必要があります。
⑤適切な成果が設定できていない
前述の通り、成果が出ていないように見えるとどうしても運営がストップしやすいわけですが、成果が見えていない原因として「そもそも適切な成果を設定できていない」というケースも散見されます。
オウンドメディアは取り組みの期間・ステージに合わせた成果設定が必要です。たとえば、運営初期のステージであれば、記事の執筆・更新すらまだ安定していないはず。そのような時期であれば、本来は「記事の制作本数」などを成果として設定するのが適切なはずです。しかし、そういった運営初期の時期にも関わらず、いきなり最終コンバージョン件数(お問い合わせの獲得件数、商品の購入件数・売上額等)などを目標にしてしまうと、当然ですが「成果が出ていないじゃないか!」と、また経営者に言われてしまうことになるわけです。
このように適切な成果設定ができてないと、オウンドメディア運営を途中でストップしてしまうことに繋がりやすくなります。
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オウンドメディア運営で成果を出すための対策
ここまでの内容で「オウンドメディアが失敗してしまう原因(意味がないと思われてしまう原因)」は理解できたかと思いますが、では運営を途中でストップさせずに”成功に導く・成果を出す”ためには何が必要なのでしょうか?
弊社がこれまで多くの企業のオウンドメディア運営をサポートしてきた経験から言えることとしては、以下の5点が成功に必要なポイントだと考えます。
①成果達成までの戦略を策定する
オウンドメディア運営で成果を出すためには、まず「成果達成までの戦略を策定する」ことが非常に重要です。
オウンドメディアは手軽に始められるがゆえに、見切り発車・無計画にスタートを切ってしまうケースが多く見受けられます。しかし先にお伝えした通り、目的・目標を明確にしないまま進めてしまうと効果的なコンテンツ(ターゲットユーザーが必要としている・刺さる情報)を作成することができず、かつ効果測定も難しくなります。
オウンドメディアで成果を出したい場合は、必ず成果達成までの道筋を戦略として事前に描き、その戦略に沿った運営が必要です。そのため運営を開始する前に、現状分析(市場・Web環境調査、自社・競合分析等)を行い、それを踏まえた上で中長期での目標設定(適切なKGI・KPI設定)を実施すべきでしょう。
②長期的に運営できる体制を整える
運営を開始する前に必要なこととして、戦略の策定に加えて「長期的に運営できる体制を整える」ことも重要です。
「オウンドメディア運営が失敗してしまう原因」の3つめでお伝えした通り、よくある失敗の原因として「更新が続かない」というケースも非常に多く散見されます。そして更新が続かない理由のほとんどは、運営体制の不備です。
コンテンツ制作をまだ行ったことがない・経験がないという場合、どれほどの業務負荷があるのかの想定が難しく、その結果「思っていたよりもコンテンツ制作が大変…」「他の業務と並行して行えない…」という状況に陥りがち。その結果、運営がストップしてしまうわけです。
そのため先を見据えた上で無理なく運営が進められるように、余裕を持った要員の確保・体制構築をあらかじめ実施しておく必要があります。この体制構築がうまくできているだけでも、オウンドメディア運営の成功確率は飛躍的に向上します。
③ユーザーファーストな良質コンテンツを計画的に制作する
オウンドメディアを運用するメリットとして「確度の高いリード獲得ができる」というものがあり、それは会社にとって明確な成果と言えます。しかし、そのような確度の高いリードを獲得するためには、「ユーザーファーストな良質コンテンツを計画的に制作する」ことが大切です。
ユーザーが必要としている有意義な情報コンテンツを作成・掲載し、Webでの検索を通じて(SEOによって)ユーザーにその情報に触れてもらうことで、まだ自社商材に関心が少ない層(潜在層)に対してもアプローチすることができ、加えてそれらユーザーの商材への興味関心を自然に高めさせることもできるからです。
オウンドメディアにユーザーが流入する場合の主要経路は「検索エンジン」が圧倒的なので、その流入を最適化するためにも「ユーザーファーストな良質コンテンツを計画的に制作する」ことは非常に重要でしょう。
④SNSを併用してデリバリーを強化する
加えて、「SNSを併用してデリバリーを強化する」ことでさらにオウンドメディアの成功確率を高めることもできます。
別の記事「オウンドメディアとSNSを併用・活用すると流入効果倍増!? 2つを活用すべき理由・メリット・併用時のポイント等を徹底解説。」でもこの点には触れていますが、オウンドメディアが持つ「SEOに強い(検索エンジンからの安定的な流入が期待できる)」という特性と、SNSが持つ「拡散性が高い(不特定多数に情報を広められる)」という特性は非常に相性が良く、2つの相互作用によって集客力を大きく高めることができます。
そのためオウンドメディアで成果を出していくためには、コンテンツがSNSで拡散されやすいような仕掛けを作ったり、公式アカウントを立ち上げて自ら積極的にSNSで投稿し、オウンドメディアのコンテンツが拡散されるようなデリバリー強化に向けたアクションを取ると良いでしょう。
⑤外部の専門家にサポートをお願いする
それでも「なかなか成果が出ない・上がっていかない…」という場合は、外部の専門家(デジタルマーケティング・オウンドメディア運営のコンサルタント等)にサポートをお願いするのも手です。
オウンドメディア運営とひとことで言っても、成果を出すために必要な知識・ノウハウは多岐にわたります。また実務では、経験がないと判断が難しいという局面にもよく遭遇するため、運営経験が浅い状態では社内・インハウス対応が難しいというケースも散見されます。
そのような時はオウンドメディア運営のスペシャリストであるサポート会社に運営を代行してもらったり、内製化に向けてコンサルティングに入ってもらうことで、成果を上げていくと良いでしょう。特に将来的に「自社だけで運営を行なっていきたい」と考えている場合は、“正しいノウハウ・経験の蓄積”が必須になってくるため、専門家による伴走での支援をお願いするのがベターです。
まとめ:成果達成までの道筋を描くのが大切
今回は、オウンドメディア運営が失敗してしまう原因と成果を出すための対策について、現役WEBマーケティングコンサルタントが解説しました。
オウンドメディアは運営目的が明確になっていなかったり、更新が続かない・成果を急ぎ過ぎてしまうと、特に失敗につながりやすくなります。そのため、今回ご紹介したような「成果を出すためのポイント」をしっかり押さえたうえで、戦略的な運用を行うことが大切です。
これからオウンドメディア運用を行う予定の企業や担当者の方々は、ぜひ本記事の内容を頭の片隅に置きながら業務を進めていっていただければ幸いです。
弊社では、オウンドメディアを活用したコンテンツマーケティング・SEO対策などをご支援していますので、自社サイト運営で課題をお持ちの企業様は、お気軽にトリッジまでご相談ください。現状のお悩みをお聞かせいただくだけでも結構です。
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