オウンドメディアを運営する主な目的は、「自社の事業課題の解決」であり、中でも特にオウンドメディアが解決しやすい事業課題としては、①マーケティング(集客・売上創出)、②ブランディング、③採用、④社員教育の4つです。
「自社ではまだオウンドメディアの運営を行っていないけど、うちも始めた方がいいのだろうか…?」そんな悩みを抱いている企業様も多いと思いますが、目的をしっかり定めずに曖昧なまま運営をスタートしても、高い成果をあげることはできません。
そのため本記事では、オウンドメディアの運営を開始する前に整理しておくべき「目的」、「設定すべき指標」、「運営のポイント」などをわかりやすく解説していきたいと思います。
戦略の設計において前提となる重要な点も含まれますので、これからオウンドメディアの運営を予定している企業や実務担当者の方の参考になれば幸いです。
<この記事を読むとわかること>
オウンドメディアを運営する目的
目的ごとの設定すべき指標例
オウンドメディア運営のポイント
<筆者プロフィール>
日比 海里
株式会社トリッジ代表取締役 / WEBメディアディレクター・コンサルタント / デザイナー
デザイン・コンテンツ制作運用スキルをベースに、グラフィック・WEBデザインやオウンドメディア運営のサポートを通じてクライアントの課題解決・事業グロースを支援。
<目次>
オウンドメディアとは
まず最初に、「オウンドメディア」そのものの定義から整理しておきます。Webマーケティングでは、「PESOモデル」と呼ばれる4つのメディア(オウンドメディア、ペイドメディア、アーンドメディア、シェアードメディア)を活用して戦略・施策に取り組んでいくのが基本ですが、その中の1つであるオウンドメディアは、「自らが発信権・編集権を持っているメディア」を指します。
たとえば、以下のようなメディアが例として挙げられます。
<オウンドメディアの例>
コーポレートサイト
ブランドサイト
製品・サービスサイト
ランディングページ
ブログ型情報サイト
SNSの企業公式アカウント
(紙の)会社・サービスパンフレット
ここで注意したいのが、「自社が発信権・編集権を持っているメディアは全てオウンドメディアに含まれる」ということです。たとえばよくある勘違いとして、SNS(Facebook、Instagram、X等)の企業公式アカウントを「アーンドメディア」や「シェアードメディア」に分類してしまっているケースが挙げられます。
確かにSNSの企業公式アカウントは他社のプラットフォーム(facebookであればMeta社のプラットフォーム)上に作られますが、それでもそのアカウントの発信権や編集権は自社にあるはず。そのため、SNSの企業公式アカウントはオウンドメディアに分類するのが正しい姿と言えるでしょう。
そのような意味では、Webに限らなければ紙のパンフレットや会社案内も「自社に発信権や編集権のあるメディア」に該当するので、これらもオウンドメディアと言えます。
オウンドメディアを運営する目的と設定すべき指標
そんなオウンドメディアを運営する目的としては、本記事の冒頭でもお伝えしたとおり「自社の事業課題の解決」です。
闇雲に運営をスタートしてしまうと「PVの獲得が目的でしょ!」というような、本来“手段”であるべきものが“目的”に据えられてしまうケースが生まれやすいので、この点はしっかり最初に認識しておくべきでしょう。オウンドメディア運営にとってPV獲得は決して目的ではなく、あくまで「事業課題の解決」が目的です。
中でも特にオウンドメディアが解決しやすい事業課題としては、①マーケティング(集客・売上創出)、②ブランディング、③採用、④社員教育の4つが挙げられます。
①マーケティング(集客・売上創出)
まず1つめが「マーケティング(集客・売上創出)」です。オウンドメディアにおいては、これを目的として運営する企業が最も多いのではないでしょうか。
オウンドメディアでターゲットユーザーにとって有意義な情報を発信していくことで、Webでの検索を通じて幅広いユーザーとの接点を作り出し、集客、ひいては売り上げの創出へ繋げいくことが大きな目的になります。
この目的でオウンドメディアを運営する際は、「ターゲットユーザーが知りたい・探している情報」を届けて、それによってターゲットユーザーの課題を解決してあげること重要です(=求めている情報でなければ集客はできない)。
マーケティング(集客・売上創出)を目的とした場合、設定すべき指標としては、「売上」や「顧客数」、「リード数」、「商談数」などが挙げられます。
②ブランディング
2つめの目的は「ブランディング」です。オウンドメディアは前述の通り「自らが発信権・編集権を持っているメディア」であり、自社で自由に情報発信ができます。そのため、制約など考慮することなく、会社として伝えたいメッセージ・価値観などをユーザーと共有することができるため、会社としてのブランディングに役立ちます。
自社で自由な情報発信ができることはユーザーとの接点を増やすことにも繋がり、その結果として双方での信頼関係の構築・深まりが得られるので、オウンドメディア運営の目的としてブランディングを優先する企業も多く存在します。
なお、ブランディングを目的とする場合に設定すべき指標としては「企業認知度」、「好意度」に加え、Webにおける「指名検索数」やSNSでの「UGC数」なども参考指標になり得るでしょう。
③採用
3つめの目的は「採用(リクルーティング)」です。企業の採用活動は、かつては求人サイトを中心としたものがほとんどでしたが、求人サイトでは求職者に伝えられる情報が非常に限られ、業務内容や契約条件などを伝えるだけで終わってしまうこともよくありました。
しかしオウンドメディアであれば、自社の理念・存在価値・社風・働き方・求められるスキルなど、事前に伝えておきたい情報を自由かつ幅広い形式で発信することができるため、求めている人材の応募をより多く募ることができます。また、入社後のミスマッチを減らして、早期離職を削減することも可能です。
そのため最近では「オウンドメディアリクルーティング」という言葉もよく使われるようになったほど、オウンドメディアを採用目的で活用するケースが目立ってきています。
採用を目的とする場合に設定すべき指標としては「採用数」、「エントリー数」などが直接的なものになりますが、「面接や内定における辞退率」や選考過程で得られる応募者からの「オウンドメディアを見たという声の数」なども参考指標として考えて良いでしょう。
④社員教育
4つめの目的は「社員教育」です。「オウンドメディアを運営することと社員教育には関係性がないのでは?」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
オウンドメディアで情報発信・コンテンツ制作を行っていくためには、一定量の調査分析・自主的な学習・スキルの習得が必要になります。特に自社の商材に関する深い情報を発信するとなると、専門知識がなければ書けないケースも出てきますし、他部署とコミュニケーションをとりながら正確に執筆しなければいけない場面にも遭遇します。
そういった経験を経ることで、コンテンツ制作担当者が社員として成長し、それが社員教育になるわけです。そのため若手社員の教育目的でオウンドメディアの運営を行うことも効果的だと言えます。
この場合の成果指標の設定は難しいですが、例えば「社員満足度」などは1つの参考指標になり得るでしょう。
オウンドメディア運営のポイント
以上のように、オウンドメディアは事業課題の解決を目的として運用することで、非常に高いマーケティング効果を得ることができます。
しかし、だからといって闇雲に運営を行なっても成果は出ません。きちんと成果を出していくためには以下の運営上のポイントを押さえておくことが肝要です。
①自社の現状の事業課題を整理しておく
まず大切なことは、現状分析を通じて自社の事業課題を整理し、それを正確に認識しておくことです。
オウンドメディアも決して万能ではなく、解決しやすい課題(前述の4つ)もあれば、解決しにくい課題もあります。そのため、自社が抱える課題が前述の4つの課題と合致しない場合、当然ながらオウンドメディア運営をスタートしても高い成果は見込めません。
オウンドメディア運営を見切り発車でスタートしてしまうと、自社の課題整理をスキップしてしまう恐れが出てくるので、必ずあらかじめ現状の事業課題を整理しておきましょう。「現状分析」は戦略的運営において最も重要なファクターです。
②運営体制を整える
事業課題の整理と同時に、オウンドメディアを運営していくための体制を整えておくことも重要です。
「【誤解】オウンドメディアって本当に意味ないの?運営が失敗してしまう原因と成果を出すための対策を解説。」でもお伝えしている通り、運営が失敗してしまう原因の1つに「更新が続かない」ことが挙げられます。そして更新が続かない理由のほとんどは、運営体制の不備です。
いざ意気込んで運営をスタートしたものの、想定していたよりも制作に時間を取られ、コンテンツ公開が継続できなくなってしまう等は、“オウンドメディア運営あるある”の1つ。
オウンドメディア運営は中長期で成果を狙っていく施策なので、無理なく継続できるよう余裕を持った要員の確保・体制構築をあらかじめ実施しておく必要があります。
③検索需要を事前に把握しておく
また、オウンドメディアへのユーザーの流入経路は検索エンジンが中心となるため、高い成果を狙っていく上ではGoogleのアルゴリズムを理解しつつ、ユーザーの検索需要(どんな情報を探しているのか、それを探している人がどれだけいるのか)をあらかじめ把握しておくことも大切です。
特に「情報を探している人がどれだけいるのか」を意識することは重要で、仮に特定のキーワードで検索1位に表示されたとしても、そもそもその情報を欲しているユーザーが少なければ、当然ながらオウンドメディアに流入してくるユーザーの数は増えません。その結果、成果が全く上がらないという状況に陥ります。
そのため、「Google広告キーワードプランナー」や「Ahrefs」をはじめとしたキーワード分析ツールなどを使い、自社が抱える事業課題に関連した検索需要がどれくらいあるのかを事前にしっかり調査・分析しておきましょう。
④高品質なコンテンツを発信する
検索需要を把握できたら、あとはそれを基に「ユーザーファーストな良質コンテンツ」を発信していくことが必要です。
ユーザーが必要としている有意義な情報コンテンツを作成・掲載し、Webでの検索を通じて(SEOによって)ユーザーにその情報に触れてもらうことでサイトへの流入が実現され、その結果事業課題の解決につながっていきます。
現在のGoogleの検索エンジンは、ユーザーが探している・欲している物事に対して、その答えとなる適切な情報を検索結果に表示しようとするアルゴリズムが組まれているため、この点もオウンドメディア運営で成果を出すためには必ず意識する必要があります。
⑤外部の専門家にサポートをお願いする
それでも「なかなか成果が出ない・上がっていかない…」という場合は、外部の専門家(デジタルマーケティング・オウンドメディア運営のコンサルタント等)にサポートをお願いするのも手です。
オウンドメディア運営とひとことで言っても、成果を出すために必要な知識・ノウハウは多岐にわたります。また実務では、経験がないと判断が難しいという局面にもよく遭遇するため、運営経験が浅い状態では社内・インハウス対応が難しいというケースも散見されます。
そのような時はオウンドメディア運営のスペシャリストであるサポート会社に運営を代行してもらったり、内製化に向けてコンサルティングに入ってもらうことで、成果を上げていくと良いでしょう。特に将来的に「自社だけで運営を行なっていきたい」と考えている場合は、“正しいノウハウ・経験の蓄積”が必須になってくるため、専門家による伴走での支援をお願いするのがベターです。
以上の5点を押さえた上で、オウンドメディアを計画的・戦略的に運営することができれば、成果が出やすくなっていくはずです。
まとめ:オウンドメディア運営の目的を履き違えないことが大切
今回は、オウンドメディアの運営を開始する前に整理しておくべき「目的」、「設定すべき指標」、「運営のポイント」などを解説しました。
オウンドメディアは行おうと思えば手軽にスタートすることができるため、つい目的を意識しないまま始めてしまったり、本来中間指標でしかない「PVの獲得」などが主目的になってしまっているケースもよくあります。
しかしオウンドメディア運営の本来の目的は「事業課題の解決」です。この点をしっかりと意識しながら、自社の事業課題が何なのか、そしてその抱える課題が本当にオウンドメディア運営を通じて解決できる類のものなのか。ここをあらかじめきちんと整理しておく必要があります。
弊社では、オウンドメディアを活用したWebマーケティング・SEO対策などをご支援していますので、自社サイト運営で課題をお持ちの企業様は、お気軽にトリッジまでご相談ください。現状のお悩みをお聞かせいただくだけでも結構です。
Comments